人がアメとムチでは動かない理由


山本真弓(ヤマモトマユミ)
50歳で手柄を手放してよかったよ

わかりやすさが説明を指すなら、伝わりやすさは、相手の感情を指すので、伝わらない人にどれだけ努力しても伝わらないのです。



そもそも伝える以前の問題で、相手と自分との関係性もさることながら、聞く目的と伝える目的が一致しなければ、言葉は届かないのです。



どうりで人は、うまい歌より絆にお金を払うわけです。


 

目次


人はアメとムチでは動かない理由


成長しない人の末路


生産性を上げることより大切なこと


人を動かす「Why?」


あなたよりあの人の方がわかりやすいと言われても笑るようになった理由


わかりやすさと伝わりやすさは違う


まとめ

 


人はアメとムチでは動かない



相手が動かないのには理由がありました。


私は長い間、人を動かすにはアメとムチがうまくいくと思っていたけど違いました。



アメとムチを使う上司を持つ "行動しない部下" に、「なぜそれをしているの?」と聞くと、多くが「会社が言ったから」と答えるのです。


人が動かないのは「何をするのか?」しか聞かされていないからです。



動かなければ、成長もしません。


言われた側は、成長しないかわりに「失う怖れ」を持ちます。



いいえ、聞く側に元来あった「失う怖れ」が増えたと言った方がしっくりきます。



会社を首になる怖れも、付き合ってる異性に捨てられる怖れも、「怖れ」自体、性質は同じです。



お金を失う怖れは、奪われる意識が増していきます。


水道も電気も使ったのは自分なのに、支払う時に使った自分を忘れるからです。



借金が返せない怖れは、自転車操業が始まります。


捨てられる怖れは、自分を殺して相手に合わせるようになっていきます。



もう君は用なしだと言われる怖れは、犠牲や我慢が蓄積されていきます。


仲間外れにされる怖れは、その他大勢に埋もれていきます。


みんなと同じことをしなければ安心できなくなります。



すべて自分で選んでいるのです。


どれもその先にあるものは、「自己重要感を損ねること」です。



つまり、「怖れ」が指すものはどれも、大切されない自分を守るためなのです。


結局、そういった自分にならないために必要なことは、「なぜそれをするのか?」ということでした。



目次へ

 


成長しない人の末路



2019年10月から始まった最低賃金1,000円という発効は、低賃金の労働者が救済されるわけではありません。



その逆で、低賃金の人から真っ先に解雇されていきます。


このご時世、人件費を大幅に上げる企業の方が少ない。


会社を潰すか、人員を減らすか、企業は基本、この二択を迫られます。



低賃金の人にとって「最低賃金」とは、最低限の収入を補償するという役割を果たしているにすぎません。


ほとんどの企業が事業継続に努めるので、最低賃金が上がれば人を減らすほうを選択するのはどこも一様に同じです。



その時、真っ先に解雇される対象は、誰でもできる仕事しかできない人、低賃金だから仕事がある人たちです。



そもそも最低賃金が上がると生産性が上がるかと言えば、そんな効果はまだどこからも報告されていません。



弱者を救済するための最低賃金引き上げは、スキルのない人を排除するためにあるといっても過言ではありません。



じゃ、生産性を上げるとどうなるのかと言えば、自動化に投資できない企業は淘汰されていきます。



製造業なら、大量生産から少量多品種生産へと生産体制が変化しているので、自動化しても回収できる見込は少ないし、受注先の大手企業の方針に逆らえる中小零細はないに等しい。



捨てられる怖さがあるから当然です。



サービスや小売業でも同じで、自動化にしたからといって、自動化に投資した額が回収できる見込みはありません。それに、デジタルを使いこなせないなら自分の舵を自分で握れないのです。



生産性という数字を引き上げるためだけに、「格差の拡大は史上最悪」という犠牲を、誰でもできる仕事をする人は引き受けなければならないのは自明です。



それに、利益率を上げるには、雇用を削減すれば達成できるというのは、誰もがわかっていることです。しかし、多くの中小零細は、生産性を上げることより今の雇用を守るほうを選んでいます。



結局、苦しむのは、低賃金だからこそ仕事にありつける、特別なスキルを持たない人たちです。



海外を見ても同じで、生産性が高い国ほど貧困率も高い。



日本でも、賃金引き上げによる「低賃金労働者の影響率」を見ても、2012年2~5%だったのが、2016年では13.8%まで上昇しています。



急激に最低賃金を上げ続けていくと、税金を払えない人でごった返す国になるのは予測圏内です。



目次へ

 


生産性を上げることより大切なこと


最低賃金を毎年引き上げ続けていくことで、生産性の低い企業が徐々に淘汰されていくのは避けられません。



比例して、そこに勤める人の多くはスキルに乏しく、簡単には再就職することも難しい。



私のクライアント先でも、スキルのない人がトラック運転手になると言って辞めていきました。辞める少し前、話をさせてもらった時、「スキルがないから辞める」というのです。



ここで需要なことは、運転手になりたいから辞めるのではないということです。


スキルがない自分は、会社の役に立たないから辞めるのです。



その理由で次に行っても同じか、もっと大変なことがあると告げると、嫌悪感が表情ににじみ出ていました。



そりゃそうです。


その人にとって私が言う事は、余計なお世話なのですから、ムッとされて当たり前です。



こうして、冒頭で言った「何をやるか?」しか聞かされていなければ、「スキルを身につけたい」とまで考えが及ばないのです。



私がコーチングするという段階まで至らず、自責を嫌悪感で消して辞めていかれました。


でも、もし彼に「なぜ営業をするのか?」がわかっていたら、あることが起きていたと断言できます。



目次へ

 


人を動かす「WHY」



そのあることこそ、「共感」です。


一般的には、「WHAT(何を)」から伝える人が多いですが、それでは人の心に伝わる言葉にはなりません。



私たちの心は、「何をするか」や「どのようにやるか」ではなく、「なぜそれをやるのか」を伝えられて初めて、相手の気持ちをより直観的に察知し、共感が生まれ、行動を起こす傾向が強まります。


「なぜやっているのか?」に共感すると、人は状態変容が起こります。


桃太郎の犬やキジと同じことが起こるのです。



はじめはきびだんご欲しさだったとしても、桃太郎の鬼退治に行く理由に共感した時、きびだんごをくれたからという理由さえ、一緒に目標を達成したいという状態に変わるのです。



人を動かすというのは、「自分たちは、なぜそれをやっているのか」というメッセージが伝わるからこそ、人はあなたの言葉や行動を支持したり、ファンになったり、商品を購入したりします。




目次へ

 


あなたよりあの人の方がわかりやすいと言われても笑えるようになった理由



ある人に、そう言われたとき、私は素直に「それは間違いありませんね」と言えました。でもダウン症の人に伝わったということは、「難しいから伝わらない」ことにはなりません。



それがわかったとき私は、「WHAT(何を)」や「HOW(どうやって)」などには興味がなくなりました。



その代わり「なぜそれをするのか」、「私はどこに向かうのか」に意識を強く向けられるようになったのです。



アメとムチではなく、周りから「この人のために動こう」と思ってもらえるような「巻き込む力」が求められるのは、今に限った話ではありません。



戦国時代以前、太古の昔から変わらない普遍的価値が「共感」です。



まわりの人たちを巻き込んでいくために、「なぜ」の部分を常に伝えていく姿勢が欠かせないことは、たくさんの書籍でも見ることができます。



それは、「なぜ」の部分に相手が共感し、心を動かされるという「感情」の要因が大きく影響するからです。



双方に「感情的な繋がり」があるからこそ、相手のために「動きたい」というモチベーションが発生するのです。