譲れない条件


奈良ホテル


エレガントな佇まいと、ベテランの演技派で知られるその人と、老舗のホテルで待ち合わせをした。


ずいぶん早く着いた私は、部屋で資料に目を通す。


彼女はマネージャーなしに現れた。噂には聞いていたが、本当にひとりだった。ひょうひょうと気取りのない笑顔で語り、椅子に座る。


照明がセットされる中、紅茶が運ばれてきた。


彼女はポットで葉が開くのを待ち、カップへ注ぐと背を伸ばして、私のほうに向き直り、静かに言った。


「お先にいただきます」


教科書には載っていないお付き合いの小さな流儀。教養はこの世界で学んだそうだ。


休憩に入って今度は、私が質問を受けた。


出身が大阪であると答えると、奈良との折り合いを尋ねられた。


私は30代の頃、ストリップ劇場と飲み屋と古着屋が林立する、トンボリ(道頓堀)に長く身を寄せていた。


小さな路地が幾筋もあり、夜遅くまで人通りが絶えない。古都奈良の環境とは雲泥の差だが、ある場所の空を見ると「変わらないなぁ」とほっとする。


それは自宅マンションのベランダにある。最上階の角部屋から遠く見える平城京の空は、区切られたスペースは小さいが、遮るものがなにもない。


その空は、あの日踊り疲れた若い娘らと路地裏で眺めた色と同じなのである。


ここではないどこかを探すのではなく、今あるものを大事にする生き方に変えて10年になると答えた。


間髪開けずに今度は、人生で譲れない条件を尋ねられた。私の人生において譲れない条件は、年齢肩書き問わず、『私が尊敬できる人』


人はみんな、不快感でジャッジしてしまうけど、不快な人に勝つ意味はありません。


その人は、なぜかメモを取っていました。聞き手が逆になってしまった「ひとこま」


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